「揚げ物」好きが「短命」は本当か

直感として揚げ物料理の食べ過ぎが健康にあまり良くないのはわかるが、これまでの研究結果からは明確な関係はわかっていない。今回、米国の高齢女性を対象にした食習慣の調査から揚げ物料理を多く食べた場合、心血管疾患にかかりやすく死亡リスクも高くなることがわかった。

揚げ物の複雑な化学変化
 高温の油で食材を揚げる料理法は、広く我々の食生活の中に存在している。唐揚げやトンカツ、ポテトチップス、ドーナツなど、おかず、スナック、菓子類などほとんどのジャンルに揚げ物料理があり、避けるのが難しいほどだ。

 揚げ物に使われる揚げ油の繰り返し使用は、肉や魚、野菜など揚げる食材からタンパク質や脂質、アミノ酸などが油へ移行することで油の酸化を促進し、劣化した油による健康影響が懸念されている。また、揚げ油自体も注目され、一般家庭ではリノール酸の多いものからキャノーラ油などの不飽和脂肪酸のオレイン酸の多いもの、特定保健用食品など栄養機能的に優れた植物油を選択するようになっているようだ。

 揚げ物は、からりとした食感や独特の風味が美味しく調理法としても重要だが、揚げ油の劣化や揚げ油、揚げ物料理自体の影響について多くの人が気にしているということになる。実際、ウサギの実験では、実際の調理で起きるように揚げ油にコレステロールを含ませた場合、オレイン酸の多い油のほうがアテローム性動脈硬化症の発症を抑える効果があることがわかったという。

 揚げ物料理が、とりわけ心血管疾患のリスクになるメカニズムには、活性酸素による酸化ストレス、身体を構成する分子の中にある電子の不安定化=フリーラジカルが関与していると考えられている。

 揚げ油を繰り返し使うと熱酸化し、食材に含まれる物質が影響して複雑な化学変化を起こし、それによって生じた物質が我々の身体に入って酸化ストレスの原因となる。酸化ストレスによって血管の内側に炎症が起きるなどし、それが血管の機能不全につながり、血管の伸縮が阻害されたり内側にゴミが溜まりやすくなったりする。その結果、血圧が上がったりアテローム性動脈硬化症になるリスクが生じるというわけだ。

 欧米化している日本人の食生活にも揚げ物料理が多くなっている。日本人の会社員715人(21~66歳、平均39.9歳、男性83.4%)を調べた研究によれば、週に3~4回、揚げ物料理を食べているという。

 揚げ物料理をよく食べる場合、2型糖尿病や心血管疾患のリスクが高くなるという研究は多い。その一方で、スペイン人を対象にした調査ではオリーブオイルやヒマワリ油を使うと心血管疾患や死亡リスクは高くならないという研究もある。

 個々人の年齢や体調・健康状態、脂質異常症などの病気にかかっているかどうかによってもその影響は変わってくるだろう。今では目の敵にされているサラダ油やリノール酸の多い紅花油なども、使い方によっては健康に悪影響をおよぼさないことがある。

揚げ物の種類によってリスクが上がる
 そうした揚げ物料理と心血管疾患などの病気、死亡リスクについて、英国の医学雑誌『BMJ』に新たな研究が出た(※7)。これは米国のアイオワ大学などの研究グループによるもので、米国の一般女性(閉経後)を対象に米国国立衛生研究所によって40医療施設が参加して行われた大規模な集団臨床試験「Women’s Health Initiative(WHI)」をもとに、1993~1998年に調査に参加した50~79歳までの10万6966人の女性(2017年時点)の揚げ物料理の食生活(アンケート)と心血管疾患による死亡率、全死亡率について調べた。

 年齢や人種、教育、年収、喫煙、飲酒、コーヒー摂取、病歴、運動などの変数を調整した結果、1日1食以上、揚げ物料理を食べている群はそうでない群に比べ、全死亡リスクと心血管疾患による死亡リスクで1.08倍高く、フライドチキンの場合、週に1食以上食べている群はそうでない群に比べ、全死亡リスクで1.13倍、心血管疾患による死亡リスクで1.12倍高く、魚介類のフライの場合、全死亡リスクで1.07倍、心血管疾患による死亡リスクで1.13倍高かったという。一方、がんによる死亡リスクと揚げ物料理の関係は統計的になかった。

 全体の傾向をみると、揚げ物料理をよく食べているのは、年齢が若い、非白人、定収入、低学歴の層に多く、喫煙し、運動習慣がなく、よりコーヒー消費が多く、野菜を食べず、菓子類を多く食べるなど食事の質が悪いことがわかった。また、2型糖尿病にかかっている割合が高く、BMI値も高い傾向があった。

 研究グループによれば、フライドチキンと魚介類のフライを週1回から月に2~3回、食べる場合、心血管疾患の死亡リスクが有意に上がる。また、これ以外の揚げ物料理については、心血管疾患とは関係がなかった。

 米国で揚げ物料理を食べる場合、家庭で調理されたものではなく、ファストフード店などの外食が多く、そうした環境で使われる揚げ油はコーン油がほとんどだと研究グループは指摘する。前述したスペインの調査によれば、オリーブオイルやヒマワリ油を使えば逆に心血管疾患のリスクを下げる可能性があり、揚げ油の種類によっても異なった結果になるだろう。

 前述したように、揚げ物料理は揚げ油を繰り返し使用することで熱酸化が進む。また、フライドポテトやポテトチップスの場合、高温で揚げると発がん性や心血管疾患と関係のあるアクリルアミドが生じる危険性があるなど複雑な化学変化が起きる。

 さらに、魚介類など揚げる対象の食材によって、その食材自体が持つ栄養素や疾患の予防作用も考慮に入れなければならないだろう。単なる素揚げとフィッシュ・アンド・チップスのようにベーキングパウダーの衣が厚くまとった調理法でもその影響は異なると考えられる。

 研究グループは、そのメカニズムを知るためにはさらなる研究が必要という。揚げ物好きには気になる研究だが、揚げ物ばかりにせず、ほかの食材もバランス良く食べ、運動習慣をつけてタバコは止め、飲酒もほどほどにすることでリスクを避けることはできる。

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