部下の「元気が最近ない」と感じたときの対処

連休明け、なんだか部下の様子がおかしい。遅刻や欠勤が増えたし、以前より元気がないようだ。一過性の「5月病」ならともかく、このまま休職・退職などにつながってしまったら問題だ。心身に問題があるかもしれない……。しかし、どのように接すればいいのだろうか?
このように悩んでいる人も多いのではないだろうか。どのように対処するのが最善なのだろうか。職場のメンタルヘルス・コミュニケーション対策の第一人者にして、産業カウンセラーの渡部卓氏の著書『人が集まる職場 人が逃げる職場』の内容を一部抜粋し、解決へのヒントを探ります。

・プライベートの問題が疑われるとき
私は産業カウンセラーだけでなく、大学の教員も務めており、成績が低下してきた学生への面談指導なども頻繁に行っています。その際、「この学生は最近、学業に集中できていないように感じる。もしかしたら心身やプライベートに問題があるのかもしれない」などと推察することがあります。
ただし、あまり踏み込んで話を聞くことはできません。近年、「社員のプライベートには口を出すな」というのが職場の原則になっていますが、これは大学でも同様なのです。人それぞれの心身の問題、家庭の問題などを下手に詮索・干渉すると、ハラスメントにつながることもあります。
けれども学生の話を傾聴しているうちに、本人からプライベートな問題を開示されることはよくあります。そうなると、「ああ、そうだったのか。このところ出席日数が少なかったのはそういう事情があったんだ」「なんだ、そんなことなら解決は簡単だ」などと、より的確な対策やアドバイスにつなげることができます。
このような本人が開示しないとわからない問題は、本当に対応が難しいものです。かつてはアフターファイブに飲みに出かけることで自然に聞けたかもしれません。しかし、今はアルコールに助けを借りたコミュニケーションでは問題が起きやすく、下手をすればアルコールハラスメントになってしまいます。
「職場は職場」と割り切って、「プライベートの問題は職場に持ち込ませない」と線引きできるかというと、そういうわけにもいきません。プライベートと仕事を完全に切り離して考えることは現実にはできないからです。「上司はいい人で、仕事も楽しくて、満足できる会社だけど、介護のことがあるから辞めなくちゃいけないんだ」といった話は、私の周囲でも珍しくありません。
社員のプライベートにおける重要な問題に対し、会社や上司はどう対応していけばいいのか。この問題は本当に難しいと思います。

・「理解されている」という感覚は安心感につながる
しかし、「職場の人に詮索や干渉はされたくないけど、こちらにも事情があるということはわかっていてほしい」というのが多くの社員の本音ではないでしょうか。
「理解されている」、そして「いざというときは頼ることができる」という感覚は、大きな安心感につながります。
例えば、「お父さんが病気で、仕事が手につかないほど心配だ」というのは、プライベートな情報かもしれません。けれども、そういう事情を上司が事前に理解していたなら、しばらくは早く帰れるように仕事量を調整する、なにかあったときは日中でも仕事を抜けられるように責任を分担する、などの配慮ができるはずです。
また、このような直接的配慮だけでなく、「ただ話を聞く」というだけでもものすごく大きな意味を持つということを知っておいていただきたいと思います。
それは、いわゆるコーチング単体の領域ではなく、カウンセリングも組み合わせた領域かもしれません。コーチングで行うのは、「そのような事情について、冷静になって課題を明確化し、どうやって対処していくか一緒に考えましょう」といったアプローチが中心です。それはそれで励ましになり、助けになる人もいます。
ただし、本当に追い込まれているときというのは、「ただひたすらに話を聞いてくれた」というカウンセリング的なアプローチから、次のステップへの力を得られることが多いのです。
これを行うのは、管理職や直属の上司だけでなく、隣の部署の上司や社内メンター、同僚、あるいは部下でもかまいません。具体的な行動や援助などではなく、ただ傾聴し、事情を理解して共感する、ということだけでも、大きな助けとなるのです。
そのためにも、やはり普段からプライベートな話でも自然に話せる環境づくりが大切になってきます。雑談の多い職場では、「今実家の親が入院していて、毎週末帰省していて大変なんです」といったことがポロリと漏れ出てくることがありますが、静かな職場ではそういったプライベートな話ほど出にくいものです。
ただ、気をつけていただきたいのは、「どこまでかかわるか」という問題です。相手の事情に入り込みすぎて自分が潰れてしまったり、相手も頼りすぎて共依存関係に陥ってしまったりしては本末転倒です。必要であれば産業医やカウンセラーなどの専門家も介在させ、誤った素人判断をしたり、上司1人で問題を抱え込んだりせずに対応するようにしてください。

・ワークとライフを切り離してはいけない
また、病気や介護といった深刻な問題だけでなく、趣味の活動など、ポジティブな話題にも理解を示すことが大切です。「お前、まだ若いくせにワークライフバランスがどうとか言っているんじゃない。半人前のうちはいつでも仕事のことを考えていろ」……そんな言動が昔は許されたかもしれませんが、今それをやると、ただ部下の気持ちが離れていってしまうだけです。
ワークとライフを切り離さず、それぞれのキャリアやワークライフバランスについて複眼的な見方ができるようになると、世代を超えた部下との目線も合いやすくなります。
「こいつは仕事も覚えていないのに早く帰るし、迷惑な部下だな」と思ったとしても、例えば「休日はこのような活動に打ち込んでいて、それが仕事にも間接的につながってきているんだな」あるいは「俺と同じように介護で苦労しているんだな」などと思うことができたら、関係性も和らぎます。
プライベートの事情も話しやすく、いざとなったらきちんと話を聞いてもらえる。必要に応じてアドバイスや職場における具体的な配慮をしてもらえる。このような職場は、安心して働ける、人が逃げない職場といえるでしょう。
部下の様子がおかしい、元気がない……と気になったときには、まずは何気ない雑談から始めてみてください。無理に問題を引き出す必要はありませんが、部下が少しでも開示してくれたときには、プライベートには関知しない、と遮断するのではなく、「きちんと話を聞く」ことを意識してください。

そのためにも、普段から気軽に話がしやすい職場づくりを心がけてみてください。そのほうが、上司側も気負わないマネジメントができるはずです。

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