「エナジードリンク」飲み過ぎはどれほど危険か

エナジードリンクの健康問題
疲れていても休めないこともある。
そんなときに、手軽に栄養ドリンクやビタミン剤やサプリメント、あるいはエナジードリンクを利用する人は多いだろう。
最近売り上げの伸びているエナジードリンクは、栄養ドリンクのような医薬部外品とは違って、清涼飲料水の一種だ。
だから、簡単に自販機でも手に入れることができる。
カフェインやビタミンB群やアミノ酸を含んでおり、飲んだ後に爽快感と覚醒感をもたらす飲料で、派手なデザインの缶に入っていることが多い。
日本では「レッドブル」や「モンスターエナジー」がよく知られており、さらにこの2019年7月から真っ赤な缶の「コカ・コーラ エナジー」も日本発売となった。
若い男性サラリーマンが疲れたときに飲むものというイメージだったが、最近では塾帰りの子どもが飲んでいる姿も目にすることがある。
だが、ヨーロッパでは、エナジードリンクの健康リスクに関する論争があり、2014年からは購入するのに年齢制限が必要との規制を始めた国もある。
さらに2018年からは、イギリスで、スーパーなど量販店で16歳未満の子どもへの販売を止める自主規制が行われている(イギリス議会の報告書が公開されている)。
つまり、エナジードリンクはタバコやアルコール飲料と同様に、リスクをちゃんと判断できる大人向けの嗜好品であって、子どもに対してむやみに売り込むべきではない商品という扱いになっているわけだ。
エナジードリンク飲み過ぎは危険か?
たしかに缶をひっくり返してよく見ると小さい字で、原材料の成分表とともに「お子様、妊婦、授乳期の方やカフェインに敏感な方は飲用をお控えください」と書かれている。
2019年5月に米国心臓協会(AHA)雑誌に発表されたS・A・シャー博士らによる最新の研究では、約1リットルのエナジードリンクを健康成人が飲んだところ、わずかだが血圧の上昇(5 mmHg)があっただけでなく、4時間たった後に心電図の変化(QT延長)が認められたという。
これは健康なボランティアに対する実験だから実害は無かった。
エナジードリンクの危険性でもっとも有名なのは2011年にアメリカで14歳の少女アナイス・フルニエが710ml缶2本のモンスターエナジーを飲んで死亡した事件だ。
その翌年には両親が製造会社を訴えている。
ただし、この少女はもともとの先天性疾患(エーラス・ダンロス症候群)があり、心臓の障害もあったので、やや特殊な例とも言える。
ちなみに、健康被害を引き起こす原因として怪しいとされているのはエナジードリンクの成分のうちカフェインだ。
大型缶モンスターエナジー2本に含まれるカフェインは475mgで、米国政府が出している健康成人の基準である1日400mgを超えていた。

カフェイン中毒というリスク
カフェインを過剰に摂るとカフェイン中毒の症状を示し、落ち着きのなさ、神経過敏、興奮、不眠、震え、不安、頭痛、胃痛などに加えて、心拍数の増加を生じることもある。
エナジードリンクに含まれるカフェインの心臓への作用が不整脈の引き金になって死亡したというのが遺族側の主張だ。
こうした事件以外にも、エナジードリンクを調査したさまざまな研究がある。
たとえば、フィンランドの研究では、日に数回エナジードリンクを飲む12~18歳の子どもでは、飲まない子どもに比べて頭痛が4.5倍、睡眠障害が3.5倍、疲労感が3.4倍多いという。
また、週に4回以上エナジードリンクを飲んでいる子どもでは、うつ気分を訴える率が11%多かったというニュージーランドでの研究もある。
こう見るとひどく不健康な飲料に見えるが、こうしたイギリスでの議会報告書で取り上げられているケースは、医学研究者である私の目から見ると、ちょっと「盛り過ぎ」という面もある。
こうした観察研究だけでは「鶏が先か、卵が先か」論争と同じで、エナジードリンクに含まれるカフェインで生じた健康問題なのか、もともと疲れやすくて心身の調子が良くない子どもだったのでエナジードリンクを飲んでいたのかは、はっきりしないからだ。
まあ、常識的に考えて、清涼飲料水が心身に特別に良い影響を与えるということはないだろうが。

カフェインだけが問題か?
だが、実はエナジードリンクに含まれるカフェインの量は多くない。
240mlの缶でカフェインは80mg程度、最大でも160mgなので、コーヒー1~2杯と変わらない。つまり、コーヒーを4~5杯飲めば、カフェイン過剰摂取となるわけだ。
ちなみに、同じ量のコーラはカフェイン30mg程度でそう多くない。
ただし、基準以内なら絶対に安全というわけでもないところが、実験室ではない臨床の医学のややこしいところだ。
さきに紹介したシャー博士らの研究で使ったエナジードリンクに含まれるカフェイン量は320mgだったが、現実に心電図の変化が起きている。
しかも、エナジードリンクを飲んで4時間後なので、もうカフェインの効果のピークは過ぎているはずのタイミングだ。
こうした結果から見れば、カフェインだけではなく、エナジードリンクに含まれるフレーバーやアミノ酸などの添加物との複合的な作用による心臓への影響なのかも、というのが研究者たちの解釈だ。
また、エナジードリンクに厳しい目を向けているイギリス政府としては、カフェイン過剰摂取のリスクはもちろんだが、ティーンエイジャーの肥満問題の方にも悪影響ではないかという懸念もある。
つまり、とくに成長期のティーンエイジャーにとっての「エナジー(エネルギー)」は、バランスの良い食事から得られるものであって、糖分だけに栄養素の偏った清涼飲料水はその代替品にならないということだ。

ティーンへのマーケティングのありかた
エナジードリンク市場は、世界で見れば2021年までに610億ドルの市場になると予測されている。
日本でもエナジードリンクの総売上は500億円を超えるとされる。
また、米国ではティーンエイジャーの30%がエナジードリンクを習慣的に飲むとアンケートに答えている。
そうした中で(とくにイギリスで)問題視されているのが、子ども向けのマーケティングのあり方である。
スポーツイベントの後援をすることで、エナジードリンクの「エナジー」のイメージをスポーツや健康と結びつけるマーケティング手法が、判断力の発達していない子どもにエナジードリンクを身体に良い飲み物と思わせ、過剰な消費に誘導してしまうかもしれない、ということだ。
揶揄するわけではないが、こうした健康運動は、「意識の高い」親、小児科医、教員(とくに養護教員)などによって推し進められている。
もちろん、こうした懸念は正当なことだ。
だが、思春期にあるティーンエイジャーにとって、大人自身は楽しんでいるのに子どもにはダメと言われている物質や行為はとても魅力的だ。
タバコやアルコール飲料と同じように、禁止されているから大人への反抗として試してみたくなる心理が働く。
さらに言えば、まさにこうしたエナジードリンク批判そのものが、(ときには製造業者によって意識的に)マーケティングの一部に組み込まれているのが現代社会だ。
と、ここまで説明すれば、エナジードリンクを何本もまとめて飲んだりしないでおこうと、思ってもらえるといいのだが……。

☆エナジードリンクが危険というよりも、エナジードリンクを飲みすぎるような状況に陥るほど勉強や仕事をしなければならない環境が危険だと思います。
個人間融資掲示板マロンツリー管理人

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